石巻貝のカイちゃんの大冒険

 
 
私が小学校3〜4年生くらいのある日、妹と近所のアクアショップを訪れました。
2人で水槽の色々な生き物を眺めていると、妹が「これかわいい!」と言うのです。
その指差す先にいたのは、水槽の前面ガラスに張り付き、
丸くて小さい口をぱくぱく動かして苔を食べている石巻貝でした。
その石巻貝が進んだ道に沿って苔が綺麗になくなっていました。さすが苔取り職人です。
 
そして妹が「この子を飼いたい!」というので、その石巻貝を買って帰ることにしました。
家に向かう帰り道で、妹はその石巻貝に「カイちゃん」と名付けました。
 
そして家に着き、フタを外して水を入れた瓶にカイちゃんを入れ、
下駄箱の上に置きました。
しばらく2人で見ていましたが、なかなか動きません。
動かないカイちゃんを眺めることに飽きてしまった私たちは、
その日カイちゃんを確認することはなく、
翌日見てみると…カイちゃんがいないのです!
 
瓶の周囲から下駄箱の下や靴の中まで探しても見つからず、
ついにはお父さんお母さんと家族総出で捜索する事態となりました。
結局、下駄箱の裏でカイちゃんは無事見つかり、
カイちゃんの大冒険は幕を閉じました。
 
当時小学生だった私には、水中にいる貝がまさか水面を突破して脱走するとは思いもしなかったので、
本当に驚いた出来事でした。
 
大人になった今でも、
アクアショップなどで店内に並んだ水槽に様々な生き物がいるのを見ると、
童心に帰った気持ちでワクワクしますが、
特に石巻貝を見るとそのときの思い出が蘇ります。
カイちゃんは、今も妹との思い出の中で生きているのです。