小学生の頃、突然父親が買ってきたシルバーアロワナ。
他に小さな熱帯魚や金魚を飼っていた私は、
父親から「とても大きくなる」「肉食で他の小魚を食べる」ということを聞いて、
少し怖く感じたのを覚えています。
まだ小さなアロワナは、玄関に置かれた水槽の中を悠々と泳ぎます。
靴を履く前に水槽の中をそっと窺うことが、いつの間にか習慣になりました。
ある日の朝、いつも通り水槽の方に視線を向けると、
水槽の中にアロワナの姿がありません。
幼い私は不思議に思う一方で、
もしかしたら父親がどこか別の場所に移しているのかもしれないと考えました。
そして、誰にアロワナの行方を尋ねることもなく靴を履こうと片足を踏み出したのです。
自分の靴の中に、鈍く光る銀色の何かが見えた気がしました。
反射的に足を引っ込めて、騒ぎ始めた自分の心臓の音を聞きながら、
恐る恐る靴の中を覗き込んでみます。
靴の中には、アロワナがいました。
時々水槽を飛び出しそうなくらいジャンプをしているというのは知っていましたが、
まさか本当に飛び出してしまうなんて！
父親の手によって靴の中から救出されたアロワナは残念ながら弱ってしまっており、
あまり長くは生きられませんでした。
まだ幼かった私にとって、それはとても衝撃的な体験でした。
靴の中へ飛び込んでしまったアロワナのことは、
大人になった今でも色濃く記憶に残っています。
玄関に置かれた水槽を見ると、今でも私は靴の中を気にせずにはいられないのです。