可哀想なゼブラダニオ

 
 
そのゼブラダニオが来たのは我が家が初めて熱帯魚を買うと決めたとき、今後メインとなるグッピーを買うための水質改善のためとしてやってきた。

今まで砂利、石、水草しかなかった水槽に初めて動く生き物が入り、家族皆「おお!」っとなった。

すばしっこい2匹のゼブラダニオは
常に方向を変え、あちらこちら泳ぎ回る、かと思えば突然見えなくなり、水草に隠れてジッとしている。
まるでこちら側にゆっくり鑑賞と言う時間与えたくないといった感じだった。

しばらくするとこちらも2匹のことがわかってきた。

おそらくこの2匹は同性で今後増えることはないだろうと言うこと。

片方は体格がデカく、いつも小さい方を追いかけ回していること。

視界に入れば常に追いかけ回し、見当たらなくなると探しているようだった。

そしてその小さい方のゼブラダニオは片目が潰れているようだった。

見えているのかいないのか分からないがともかく、私はその小さい方のゼブラダニオをとても不憫に思っていた。

体格が小さく、大きいものに追われ、片目が潰れている、なんだかとても可愛そうだったのだ。

ある日、大きいゼブラダニオが突然死んだ。

あまりに突然だったので少しはびっくりしたが、私は小さいゼブラダニオに「もうこれで追い回されることはないね、ゆっくり泳げるね」と声をかけた。

だが、

彼または彼女は今は
グッピーを追いかけ回している。

追いかけ回すと言うより当たり散らすと言うのが一番近い表現かも知れない。

視界に入れば追いかけ、追いつけば小突いているようだ。しつこさはないがムシャクシャしていようだ。

そのムシャクシャはどこから来るのだろうか?

今まで鬱憤か?
仕返す相手がいない空虚感か?

話をすることが出来ない君を
私は可哀想に思う。