ピラニアのカッコイイ狩りをどうしても見たかったのだが…

 
 
僕が小学生のころ、肉食動物が好きでした。肉食動物たちは、それぞれ爪や牙など鋭い武器を持っており、素早い動きで獲物を狩る。そんな姿がたまらなく魅力的に感じていたのです。そんな僕の興味の対象は、いつしかピラニアへと向いたのでした。父親がアクアリウムを趣味にしていたこともあり、僕がピラニアに興味を持つのは、必然だったかもしれません。父に頼み込み、誕生日プレゼントにピラニアの稚魚を8匹買ってもらうことができました。
 
稚魚たちは、とても小さく、生き餌を食べられるとは思えず、人工餌を与えていました。それでも、憧れのピラニアです。人工餌を噛みちぎる姿は、格好良く、いつまで眺めていても飽きることはありません。
 
ピラニアを飼い始めて、しばらくすると、小さかった彼らも、だいぶ大きくなってきました。そろそろ、生き餌も食べるのではと期待し始めていました。人工餌に食いついている姿も魅力的でしたが、やはり、生きた獲物を格好良く捕食する姿がどうしても見たかったのです。近くの小川へ行き、小魚を数匹捕まえてきました。ワクワクしながら、小魚たちをピラニアの水槽へ入れます。ピラニアたちは、すぐに小魚を餌と認識したらしく、今までに見せたことないスピードで追い回します。小魚も必死に逃げ回ります。高速の追いかけっこは迫力満点で、目が離せません。ピラニアの狩りは期待通りの格好良さです。しばらく、狩りの様子を見ていると、だんだんモヤモヤしてきました。いつまでたっても小魚が捕まらないのです。ずっと人工餌を食べてきたピラニアたちは、野生の勘が鈍ってしまったのでしょうか。狩りは失敗ばかりです。見ていることに飽きてきた僕は、小魚たちを水槽に入れたまま、遊びに出かけてしまいました。
 
夜になって水槽を見ると、小魚たちはいなくなっていました。かわりに、無残に食い散らかされた、小魚の死骸が残っていました。どうやら僕が見ていないときに狩りは成功したようです。しかし、僕は捕食シーンを見逃し、残念な気持ちと食い散らかった水槽の後片付けが大変だった記憶だけが残りました。